ろく

ピンポーン、ピンポーン。
そう音が鳴ったので、ドアを開けた。
普段なら、大体そこにはおじさんが立っていることが多い。
荷物や郵便物を届けてくれる。
しかし、今日は違う。
背の低いおばあさんだった。
話を聞くと、
朝とれた筍を買ってくれないか
ということだった。
おばあさんは農家のおばあさんの格好をしていた。
人なつっこいおばあさんだった。
外を覗くと、自転車が１台とめてあった。
後ろに黄色いかごを固定している。
きっと、そのかごの中に筍が入っているのだろう。
２本買ってくれと２本の筍を差し出してきた。
かごの中には６本ほど入っていただろうか。
おいくらですか？
私は聞いた。
１本で５００円、２本で１０００円だと言う。
１本だけ買う、という選択はさせてくれないようだったので
私は１０００円札を取りに行って、おばあさんに渡した。
２本の筍を両手に持つと少し恥ずかしい気持ちがした。
そして、筍の匂いがした。
お気をつけて帰ってください
とおばあさんに言うと、私を見ず
もう違う方向を見て自転車で出発しようとしていた。
売れた後の切り替え早い。

母に
知らないおばあさんから筍買ったよ
と言うと一発怒られた。

後から聞いた。
何年か前、父と母も家まで訪ねてきた
知らないおばあさんから松茸を買ったという。

知らないおばあさんが訪問してくる形の
販売方法って一体なんなの。

明日、筍食べます。